ルポルタージュ 産地・人を訪ねて 2010年8月号

東北屈指!一関なすの取り組み

JA いわて南なす生産部会



 岩手県の南端に位置する旧一関市及び旧花泉町、平泉町を範囲とするJAいわて南管内は、県内でも温暖な気象条件で冬期の寒さも比較的緩やかとなっています。

 この気象条件を活かし、水田、畜産、園芸を複合した農業が営まれています。園芸では主に果菜類が盛んに作られていますが、特にもなすは年々栽培が拡大しており、昨年は目標だった3億円(税込)を突破し、東北でも有数の産地として注目されています!

なす栽培の様子

なす栽培の歴史


 一関地方でのなす栽培は、昭和54年に減反政策における転作作物の一つとして、旧花泉町で10名程度の女性が露地栽培で取り組んだのがスタートとなります。

 昭和60年に旧花泉農協と旧永井農協の合併を機に生産者28名、栽培面積約170a で花泉町農協なす生産部会が結成されました。平成10年のJAいわて南農協発足以前は、旧花泉町を中心に栽培が行われていましたが、現在の部会となってからは、旧一関市、平泉町からも年々新たな仲間が加わっており、平成21年は生産者134名、栽培面積16.5haまで拡大しています。


一関地方のなす栽培の特徴


 一関地方でのなすはハウス加温作型、ハウス無加温作型、トンネル作型、露地作型の主に4作型となっていますが、その中でもトンネル作型の栽培面積が約8割と最も多く取り組まれています。トンネル作型は平成元年に関東地方のなす産地を研修したのを契機に導入が始まりました。定植を早めることができるため、ハウス作型と比較しても十分な収量を確保できること、また導入コストがハウスよりも安価で新規栽培者でも導入しやすいことから現在でも主要な作型として位置づけられています。

 一方で初期収穫量の確保、作業性の向上などから、核となる生産者を中心にハウスの導入も毎年数名おり、ハウス作型の面積も年々増加しています。

トンネル作型:トンネル作型の利用により初期生育を促して早期出荷へつなげる
トンネル作型:トンネル作型の利用により初期生育を促して早期出荷へつなげる
立毛共励会:立毛共励会には市場関係者も参加し、産地の状況を共有
立毛共励会:立毛共励会には市場関係者も参加し、産地の状況を共有

なす生産部会の特徴


 なす部会では新規栽培者の確保を重視し、部会全体で呼びかけを行い、ここ数年は毎年10名前後の新規栽培者が加わっています。

新規栽培者は一定の収入を確保するため、約1,000本(約15a)の定植本数を基本として栽培を始め、栽培にかかる資材は事業等を活用して導入し、経費の負担をできる限り低減しています。

 また、継続して栽培が続けられるよう、「1年でプロのなす農家になる」を合言葉に、新規栽培者向け指導会を通常の指導会とは別に開催し、相互巡回やベテラン農家の視察などを行っています。

 一方でなすの品質・収量の高位平準化に向けた技術向上を図るため、平成2年より立毛共励会を開催しています。共励会では事前に班ごとに全員で相互巡回を行うため、部会員同士の情報交換が行われるとともに、意識向上につながっています。本審査では市場関係者も参加して栽培ほ場を巡回するため、産地の状況が共有され、販売に活かされています。

消費者へのPR活動は、首都圏、県内への販促活動を行っているほかに、なすの消費拡大に向けた「なす料理大賞コンクール」を平成16年から開催しています。出品された料理のレシピは一関市の事業を活用してリーフレットにして販促活動などに利用しています。

 さらに昨年度からは、料理コンクールを発展させ、地元消費者との交流会を同時に開催しています。参加者からは「地元でこんなに素晴らしいなすが作られているとは知らなかった」など、一関のなすをアピールする良い機会となっています。


新規栽培者指導会:ハウス生産者ほ場にて新規栽培者が定植作業を実習
新規栽培者指導会:ハウス生産者ほ場にて新規栽培者が定植作 業を実習
料理大賞コンクール:なす消費拡大に向けた料理コンクール。平成21年からは地元生協会員との情報交流も同時開催
料理大賞コンクール:なす消費拡大に向けた料理コンクール。
平成21年からは地元生協会員との情報交流も同時開催


新たな技術への取り組み


 栽培技術についても生産者をはじめ、普及センター、JA、行政が協力して新しい技術へ積極的に取り組んでいます。

 ハウス栽培では、以前から仕立て方の検討や、適正な肥培管理、省力化を目的とした点滴かん水施肥栽培などに取り組んできました。

 また、平成13年から受粉作業の省力化を目的に訪花昆虫の利用が始まり、現在ではハウス栽培者の半数以上が導入しています。さらに訪花昆虫の利用により農薬使用が制限されたことから、天敵を利用した化学農薬だけに頼らない害虫防除に県内でもいち早く取り組んでいます。普及センターでは天敵の効果比較や訪花昆虫・天敵への影響が少ない農薬選びなどを行い、より効果的な利用に向け支援を行っています。天敵の利用者も年々増加し、現在ではハウス栽培者の3分の1が利用するまでになっています。

 なす部会では全員のエコファーマー取得を進めるなど安全・安心な産地づくりに取り組んでおり、天敵の利用についても引き続き進めていく予定です。

 トンネル栽培では、天候に左右されにくいなす栽培を目指す取り組みの一つとして、露地でのかん水に注目し、昨年度「園芸産地づくり実証ほ設置事業」を利用して「露地点滴かん水施肥栽培実証」を行いました。雨の多い年にも関わらず、生育の安定や収量の向上、追肥量の低減などの効果を確認することができました。その結果、今年度は露地栽培におけるかん水の重要性が認識され、新たに複数のほ場でかん水装置の導入が進んでいるほか、既存のポンプでかん水を行うなど、利用が広がっています。

露地点滴かん水:露地での安定生産に向けかん水の利用が広がっている
露地点滴かん水:露地での安定生産に向けかん水の利用が広がっている
訪花昆虫:訪花昆虫を利用して受粉作業を省力化
訪花昆虫:訪花昆虫を利用して受粉作業を省力化
天敵:なすの葉に定着している天敵。訪花昆虫と併せた利用が広がっている
天敵:なすの葉に定着している天敵。訪花昆虫と併せた利用が広がっている
天敵利用研修会:効果的な天敵利用に向けた現地研修会
天敵利用研修会:効果的な天敵利用に向けた現地研修会


一関なす産地のさらなる拡大発展に向けて


 なす部会では昨年度目標の3億円を達成しましたが、既に新たな目標販売額を3億5千万円と決めており、一関地方のなす栽培は今後ますます産地拡大が見込まれています。新たな目標達成に向け、今まで以上に生産者、JA、普及センター、関係機関が一体となって取り組みを進めていくこととしています。

 これからの一関地方のなす栽培に注目してください!

(一関農業改良普及センター 吉田 泰)