トマト黄化えそ病の多発圃場において、伝染経路の推定に基づく防除指導を2ヵ年にわたって実施したところ、本病の防除に成功した。
① 伝染経路の推定:育苗圃では、TSWVに感染した花き類が伝染源となり、媒介虫(ミカンキイロアザミウマ)を介してトマト苗に感染した。本圃は、トマト定植前にネギの育苗に使用していたため他の媒介虫(ネギアザミウマ)が発生しTSWVが圃場内にまん延した。
② 防除対策:育苗圃の衛生管理に加えて、本圃では定植前からアザミウマ類の防除を徹底する。

詳細は、以下のPDFファイルでご確認ください。

施設トマトに発生した黄化えそ病(TSWV)の防除成功事例

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1 背景とねらい
 トマト黄化えそウイルス(TSWV)は多犯性の植物ウイルスであり、ミカンキイロアザミウマが主に媒介し、各種作物の葉に退緑、輪紋、えそ等の症状を示す。平成28年に、県内複数のトマト生産農家において、TSWVによる黄化えそ病が発生したことから、その発生事例を調査したところ、主たる伝染経路は、育苗圃(ハウス)で感染した罹病苗を本圃(ハウス)に持ち込んだことであることを明らかにした(病害虫防除技術情報No. 28-3)。
 その後、このトマト農家に対して現地普及センターとともに防除指導を2ヵ年にわたって実施したところ、本病の防除に成功したので、ウイルス病発生時の防除指導の参考として紹介する。また、本事例では、TSWVの媒介虫としてネギアザミウマの関与が考えられたため、併せて紹介する。



2 防除指導体制の概要
(1)指導対象:施設栽培トマトに黄化えそ病が多発した農家(本圃ハウス5棟全てで多発)
(2)対策実施:平成29年、30年
(3)指導体制・内容:右図のとおり



3 対策実施の経過(図1)
(1)対策初年目(H29年)
① 計画・実行:育苗圃の衛生管理(花き類および雑草の除去)の徹底を指導。
② 評価:発生株は前年の2割程度まで減少したが、本圃ハウス2棟で散在発生。このハウスではトマトの定植前にネギを育苗していた。
     媒介虫(ミカンキイロアザミウマ)の発生(5~6月)は少なかった。
     ネギ育苗後の本圃でのネギアザミウマを介した二次伝染が考えられた。
③ 改善:ネギアザミウマの防除。
(2)対策2年目(H30年)
① 計画・実行:育苗圃の衛生管理(雑草の除去)に加えて、本圃における定植前のアザミウマ防除(ネギ育苗中の薬剤防除、トマト定植前の本圃内除草と蒸し込み)を指導。
② 評価:対策を実施した本圃では発生株はなし。
ネギアザミウマは、定植前にネギを育苗したハウスでは多い傾向であった(図2)。





4 トマト黄化えそ病の多発圃場における伝染経路と防除対策
(1)伝染経路の推定
① 育苗圃:TSWVに感染した花き類が伝染源となり、媒介虫(ミカンキイロアザミウマ)を介してトマト苗に感染。
② 本圃:トマト定植前にネギを育苗していたために媒介虫(ネギアザミウマ)が発生し、罹病苗からTSWVがまん延。
(2)防除対策
① 育苗圃では、圃場衛生(栄養繁殖作物や前作物の残花を取り置きしない、雑草の除去)を徹底する。
② 本圃では、定植前はアザミウマ類が寄生しやすい他作物の育苗は避けることが望ましい。やむを得ず育苗に用いる場合は、定植前のアザミウマ防除を徹底する。
③ ハウス周辺の除草管理を行い、アザミウマ類の増殖を防ぐ。

(参考)ネギアザミウマによるTSWVの伝播
ネギアザミウマのTSWV媒介能力は、ミカンキイロアザミウマやヒラズハナアザミウマに比べて低いもののあるとされている。本病の国内初発生は、本種によるものとされている(小畠ら1976)。

5 引用文献
(1)病害虫防除技術情報No.28-3「施設トマトに発生した黄化えそ病の発生事例と診断のポイント」
(2)小畠博文ら(1976)Tomato spotted wilt virusによるトマトの黄化えそ病 日植病報42:287-294