【奥州農業改良普及センター】


 

■ 課題名


野菜産地の強化

■ ねらい


2018年の夏に、奥州市の施設栽培ピーマン圃場において、果実に傷や奇形を生じる症状(図1-2)が発生した。症状は気温の上昇とともに増加・激化し、商品価値の著しい低下により出荷不能となった果実が大量に廃棄される事例が複数圃場で確認された。普及センターは当該症状の原因特定と管内における被害実態の把握を目的とした普及指導活動を展開した。

■ 活動対象


JA江刺園芸部会ピーマン専門部

JA岩手ふるさと園芸部会ピーマン専門部

■ 活動経過


(1) 果実に傷や奇形を生じる症状が多発した圃場における被害様相の現地確認に加えて、発生時期や農薬使用実績等について生産者からの聞き取り調査を併せて実施した。

(2) 生産者からの聞き取りや現地調査の結果、当該症状がこれまで本県での発生報告がないミナミキイロアザミウマによるものである可能性が浮上したため、現地圃場におけるアザミウマ類のサンプリングと実体顕微鏡による検鏡を行った。

(3) 現地圃場から採集したアザミウマの中にミナミキイロアザミウマと思われる個体が多数確認され、上記症状が本種による被害である可能性が濃厚となったことから、速やかに病害虫防除所へ報告した。

(4) 管内での発生実態を把握するため、JA江刺管内のハウス作型ピーマン圃場の全戸調査をJA担当者とともに実施した。また、JA岩手ふるさと管内においても類似症状の発生が報告されたことから、随時アザミウマ類のサンプリング調査を実施した。

図1 ミナミキイロアザミウマによる被害果(出荷不能)図1 ミナミキイロアザミウマによる被害果(出荷不能)

図2 ミナミキイロアザミウマによる被害果(出荷不能)図2 ミナミキイロアザミウマによる被害果(出荷不能)

■ 活動成果


(1) 加害種の同定

病害虫防除所による現地調査の結果、本県未発生であったミナミキイロアザミウマであることが確認され、平成30年度病害虫発生予察情報特殊報第2号が発行された。

図3 H30特殊報第2号図3 H30特殊報第2号

(2) 発生状況の確認と周知

発生実態調査の結果、本種の発生に地域的な偏りはなくJA江刺管内全域で発生していることが確認された。これらの結果を受けて、本種の発生について部会等に周知したことで生産者の危機意識が高まった。

図4 現地巡回の様子図4 現地巡回の様子

(3) 次年度へ向けた防除対策の検討

ミナミキイロアザミウマの発生を踏まえて、次年度へ向けた防除対策について専門部とともに検討した。その結果、地域防除暦に新規殺虫剤を採用するとともに、生物農薬(スワルスキー)の導入についても再考することした。また、各生産者が天敵製剤の導入を今一度検討する機会を設けるため、天敵製剤についての講習会を企画・実施した。

図5 ミナミキイロアザミウマ成虫図5 ミナミキイロアザミウマ成虫

(4) 生産者の危機意識が高まったことで、次年度以降ミナミキイロアザミウマが発生した場合でも、事前に提示した対策に沿った適切な防除が実施されることによって、被害の大幅な抑制が期待される。

遠藤憲宏氏平成30年度は、3月から5月にかけて全体的に平均気温が高めに推移したことでハウス作型ピーマンの活着や初期生育は概ね順調に進んだ反面、アブラムシ類やアザミウマ類が早期から発生しました。また、夏季高温年であったことから、特にアザミウマ類が多発し防除に苦慮したシーズンでした。
次年度も関係機関と協力しながら部会の活性化と生産者の技術向上を図り、産地の維持・拡大に取り組んでいきたいです。
所属職名:岩手江刺農業協同組合営農推進部園芸課  氏名:遠藤憲宏

■ 協働した機関


岩手県病害虫防除所、江刺農業協同組合、岩手ふるさと農業協同組合

■ 奥州農業改良普及センター


園芸経営チーム
(チームリーダー:佐藤成利、チーム員:河田道子、細川史絵、松橋伊織、遊佐公哉)
執筆者:松橋伊織