〇適正な温度管理・水管理により健苗を育てましょう。
〇本年は、化学合成農薬による消毒済み種子が広く流通します。化学合成農薬、生物農薬それぞれの特徴を良く理解して、適正な温度管理に努めましょう。

1 移植栽培技術:育苗
(1)播種計画
近年、作業性を優先した移植時期の早期化や温暖化傾向により、低温遭遇リスク(障害不稔の発生)のほか、登熟初期の高温遭遇リスク(玄米品質の低下)の増加が懸念され、平成29年のような出穂期以降の低温寡照による登熟遅延も起こりえます。
適期である5月10日~25日(県南部:5月10日~20日、県中北・沿岸部:5月15日~25日)に移植できるよう、移植予定日から逆算して、稚苗であれば約25日前、中苗であれば約40日前に播種する作業計画を立てましょう。
また高密度播種苗による栽培も増えてきておりますが、播種量や育苗期間がこれまでの育苗と異なります。この栽培方法に取り組む場合は、栽培方法の留意すべき点を理解して実施するようにしましょう。
(2)作業前の準備
ア 育苗環境は清潔に!
各種機材・施設の洗浄、育苗施設付近に籾殻・稲わら等を置かないようにします。
 各種機材は事前点検
サーモスタットの点検、機器が正しく作動するか確認します。
 異品種の混入防止対策
作業者相互の作業前確認と意識統一、書面での確認、種子袋記載事項の確認などを実施します。
 健苗育成のための環境改善
例年、育苗時に病害が発生する施設等では、育苗環境の悪い事例が多くみられます。
そのようなときは、置床の均平や排水対策を施すなど育苗環境の改善を図りましょう。育苗の失敗をなくすことが稲作コストの低減を図る第一歩です。



(3)育苗作業・管理の工程
作業の流れや基本事項を確認しましょう!(図1)
本年は化学合成農薬「テクリードCフロアブル」による消毒済み種子が広く流通します。生物農薬「タフブロックSP」による消毒済み種子も一部地域で流通します。特徴を良く理解して作業しましょう!



(4)生物農薬使用の注意事項および温湯消毒の留意点
ア タフブロックSP消毒済み種子を使用する際の注意事項
(ア)本剤の塗抹処理は、種子センター等で行われた上で、消毒済み種子が配布されます。農家や育苗センター等では、配布後の種子の取り扱いについて以下の点に留意しましょう。
(イ)種子に付着した有効菌が減少しないように注意します。
・浸種中は水のかけ流しはしない。
・水換えの時播種もみをゆすらない。水を入れる時は直接種もみに流水を当てない。
(ウ)本剤は、以下の薬剤との併用により防除効果が低下するため、併用を避けます。
・種子消毒剤(種子浸漬):ベンレートT水和剤20、テクリードCフロアブル、モミガードC水和剤
・土壌かん注剤:ダコニール1000
・箱施用剤(播種前床土混和処理、播種時覆土前散布):嵐プリンス箱粒剤6
(エ)いもち病の防除対策は、別途講じる必要があります。
・本剤はいもち病(苗いもち)及び苗立枯病(リゾープス菌、フザリウム菌、トリコデルマ菌)に対する防除効果が低い。
イ その他、生物農薬を自分で浸漬処理する際の注意事項
(ア)浸種後の処理(催芽時処理)で高い効果が得られます。
(イ)浸催芽前~催芽時処理の浸漬時間は、24時間浸漬を厳守します。催芽時処理では薬液を予め30℃にしておくと効果が安定します。
(ウ)薬液処理後に風乾させると有効生菌が死滅し、効果が得られなくなります。
ウ 温湯消毒の留意点
(ア)温湯浸漬に使用する種子は、前年採種したもので種子審査基準に合格した健全種子を用います。
(イ)使用可能な種子はうるち品種のみになります。もち品種は発芽率が大きく低下することがあるので、温湯浸漬は避けます。
(ウ)浸漬温度・時間は、58℃20分もしくは60℃10分を厳守します。
(エ)温湯浸漬後、直ちに浸種しますが、水や容器はきれいなものを使用します。
(オ)温湯浸漬後、直ちに浸種できない場合は、加温通風乾燥機で種子水分を速やかに15%以下に低下させ(20℃程度)、15℃以下の暗所で保管すると24週程度の長期保存が可能になります。(乾燥設備を有する施設等でやむをえない場合に限ります。)

(5)育苗期の管理
ア 温度管理
・苗質・生育時期に応じた温度管理を徹底しましょう(表1)。


イ かん水
・緑化期間中は1日1回を原則とし、過かん水(過湿)にならないよう注意します。
・通路等に滞水している事例も見られるので、排水にも留意します(写真2)。
・過乾燥も苗立枯病(トリコデルマ属菌)の原因となる場合があるので、適量のかん水を心がけます。

(6)プール育苗のポイント
ア プール育苗導入のメリット
・水稲プール育苗は、かん水作業やハウスの開閉管理の省力化が図られ、近年発生が多い細菌病の発病抑制効果も期待できます。低コスト・省力化技術としてだけでなく、病害抑制の観点からも積極的に導入しましょう。
イ 作業のポイント
(ア)置床の準備
・水平が得られないと湛水深にムラが生じ、生育の不揃いの原因となります。水準器等を用いて置床を均平にします。
(イ)種子消毒、浸種、播種、緑化
・慣行の管理方法に準じて行います。
(ウ)適正な入水時期と水位
1回目:緑化終了後2~3日以内、培土表面より下に
注意① 苗が水没すると生育ムラが生じます
注意② 入水が早すぎると生育不良の原因となります
注意③ 入水が遅いと細菌病類の発病抑制効果が期待できません
2回目:2葉目が出始めたら培土表面より上に(ヒタヒタ水の状態にしない)。(図2)



ウ 温度管理(温度上昇に要注意)
・2回目の入水まで:育苗ハウスのサイドは日中開放、夜間閉鎖とします。
・2回目の入水後:基本的に昼夜ともハウスサイドは開放します。
ハウス内が4℃を下回ると予想されたらサイドを閉めます。

2 直播栽培技術(鉄コーティング種子による湛水表面播種栽培)
直播栽培は、育苗せず直接圃場に種子を播く栽培方法です。
春作業の省力化が図られるほか、移植栽培より生育ステージが遅くなるので、移植と組み合わせることで収穫時の作業分散が可能です。このため、稲作部門の規模拡大や高収益品目導入の手段として有効です。詳細については最寄りの普及センターまでお問い合わせください。
(1)鉄コーティング種子の作製
ア コーティング作業
種子は、12~15℃の水に4~5日間(積算40~60℃・日)浸種して吸水させます。
イ 造粒
・鉄粉に少量の焼石膏を加えて種子にコーティングし(種子コーティングマシンやコンクリートミキサー等を使用)、仕上げ用焼石膏もしくは専用シリカゲル資材で仕上げます。
・鉄粉のコーティング量は、乾籾の0.5倍重を基本とします。
ウ 放熱
・コーティング後にサビを発生させることで鉄皮膜が硬くなります。鉄の酸化反応(サビ)に伴い発熱するので、発芽率の低下を避けるために放熱します。
・市販されている鉄コーティング種子用酸化調製機を利用することで、短期間・省力的に処理することができます。
・従来の手作業で行う場合は、育苗箱にコーティング済み種子を1kg/箱以下(堆積厚8mm未満)に広げます。厚くなりすぎないようにしましょう。
エ 乾燥
・乾燥中に種子同士がくっついて塊になった場合は適宜ほぐします。専用シリカゲル資材で仕上げた場合は塊が生じにくくなります。
・乾燥程度は、外観の色具合に加えて、テスト籾摺りして確認してください。種子の表面(鉄皮膜)が赤褐色になり、玄米水分が13.0%以下になったら保存が可能です(図3)。



(2)鉄コーティング種子の初期病害虫防除の新技術
ア 葉いもち・初期害虫の防除
※「鉄コーティング湛水直播栽培における葉いもち・初期害虫の防除」(H29試験研究成果)
・鉄コーティング湛水直播栽培において、播種前の種子処理剤、播種時の土中処理剤の使用が葉いもち・初期害虫の防除に有効である。(表3)
・使用時期・使用量は、最新の農薬登録に基づいて使用すること。



  • この資料に掲載の農薬は、平成31年3月12日現在の農薬登録情報に基づいています。

  • 農薬は使用前に必ずラベルを確認し、使用者が責任をもって使用してください。


(資料作成年月日: 平成31年3月12日)



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