◆ 極端な早植えは、障害不稔や登熟初期の高温による品質低下の危険性を高めます。適期移植を目標として、播種計画を立てましょう。
◆ 出芽揃いを良くするため、適正な浸種水温及び期間を守りましょう。
本年は、育苗期に細菌病類が多発する恐れがあります!育苗期間中の温度・かん水管理には最大限の注意をはらいましょう。
◆ 畦畔のかさ上げや用排水路の点検・補修等は早めに行いましょう。

育苗対策


1 播種計画
・ 近年、作業性を優先した田植の早期化及び、気候変動(温暖化傾向)にともない、一年で最も暑い8月初めに出穂期を迎える圃場が多くなり、高温登熟による品質低下のリスクが高まっています。
・ また、生育ステージの前進は、冷害危険期(幼穂形成期~減数分裂期)に低温に遭遇しやすくなり、障害不稔発生のリスクも高めることになります。
・ 適期(県南部5月10日~20日、県中北・沿岸部5月15~25日)に移植できるよう、移植日から各苗質毎の育苗期間(稚苗20~25日、中苗35~40日)を逆算して播種計画を立てます。

2 作業前の準備
(1)育苗管理体制の確認
・ 育苗規模が大きくなるほど、天候に応じたハウス開閉やかん水の臨機対応が難しくなります。昨年の状況も踏まえ、育苗計画と作業体制に無理がないか点検するとともに、管理の省力化、細菌病対策のため、プール育苗の導入を検討します。
⇒プール育苗 http://www2.pref.iwate.jp/~hp2088/library/saibai/saibai1102_2.pdf
・ また、低温・高温時やその他トラブル時に備え、育苗施設の監督役や現場の担当者同士が、常に共通認識で行動できるように、連絡体制をしっかり整えます。
(2)育苗環境は清潔に!
各種機材・施設の洗浄を実施し、育苗施設付近に籾殻・稲わら等を置かないようにします。
(3)各種機材は事前点検
・ 催芽機・育苗機は、設定と実際の温度が合っているか必ず点検します。
・ 播種機の調量設定(播種量・床土や覆土の量・薬剤量)なども事前に確認しておきます。
(4)異品種の混入防止対策
作業者同士で種子袋の記載事項や作業内容について、あらかじめ確認します。確認にはチェックシート等の活用をお勧めします。
(5) 健苗育成のための環境改善
例年、育苗時に病害が発生する施設では、育苗環境の悪い事例が多くみられます。そのような場合は置床の均平や排水対策を施すなど育苗環境の改善を図ります。
育苗の失敗をなくすことが稲作コストの低減を図る第一歩です。



(6)育苗作業・管理の工程
作業の流れや基本事項を確認しましょう(図1)。



3 種子消毒
(1)生物農薬による種子消毒を行う場合
生物農薬は化学合成農薬に比べ、処理条件や処理後の管理で効果が変動しやすい性質があります。薬剤の効果を安定化させるため、以下を参考に管理を適切に行いましょう。

ア エコホープDJ(無消毒種子を購入し、本剤で消毒する場合
(ア)防除効果を最大限発揮させるため、「催芽時処理」を基本とする。
(イ)本剤は乾燥製剤であり、有効成分(生菌)の活性化まで時間を要する。催芽時処理では、あらかじめ薬液温度を30℃に調温してから、浸種後の種籾を浸漬する。
(ウ)浸漬は必ず24時間行う。24時間以内に芽が伸びすぎる場合は、途中で薬液温度を下げる。
(エ)所定の時間を浸漬したら、そのまま播種する(機械脱水可、風乾不可)。

イ タフブロックSP(消毒済み種子)
本剤が塗抹処理された消毒済み種子を使用する場合は、以下の点に留意しましょう。
(ア)種子に付着した有効菌を減少させない。
・ 浸種中は水のかけ流しはしない。
・ 水換えの時は播種もみを揺すらない。水を入れる時は、直接種もみに流水を当てない。
(イ)本剤は、以下の薬剤との併用により防除効果が低下するため、併用を避ける。
・ 種子消毒剤(種子浸漬):ベンレートT水和剤20、テクリードCフロアブル、モミガードC水和剤
・ 土壌かん注剤:ダコニール1000
(ウ)出芽時及び育苗初期の10℃以下の低温は、防除効果を不安定にするので、温度管理に注意。
(エ)本剤は、いもち病(苗いもち)及び苗立枯病(リゾプス菌、フザリウム菌、トリコデルマ菌)の農薬登録を有するが、防除効果が十分でないので、育苗期のいもち病と播種時の苗立枯病対策を別途講じる。

(2)化学合成農薬(テクリードCフロアブル)による消毒済み種子の場合
本剤の消毒済み種子は、低濃度24時間浸漬法に比べ、催芽時の芽動きがやや遅く、低温浸種(10℃以下)や無加温出芽では苗生育やマット形成が劣る場合があるので、以下の管理を徹底します。

・ 浸種温度は12~15℃とし、10℃以下の低温としない。
・ 苗立枯病対策(薬剤・耕種対策)を別途行う。
・ 細菌病対策として、催芽・出芽温度は30℃を超えないようにする。
・ 播種前に、必ずハト胸状態を確認してから播種を行う。
・ 加温出芽を基本とする。
・ 使用しなかった種子は絶対に食用や飼料としない。

(3) 温湯消毒を行う場合
温湯浸漬処理を行う場合は、以下の留意点・手順で実施しましょう。

ア 使用する種子
(ア)前年(令和元年)産で種子審査基準に合格した健全種子を用いる。
(イ)うるち品種の種子のみ用いる。もち品種の種子や割れ籾が多い種子は、発芽率が大きく低下
するので、使用しない。
(ウ)籾水分15%以下までよく風乾させた種子を用いる。
イ 方法
(ア)浸漬温度・時間は、58℃20分または60℃10分を厳守する。
(イ)温湯浸漬後、きれいな容器・水で冷却し、浸種に移行する(浸種は通常管理)。

4 浸 種
(1)適正浸種水温12~15℃、浸種期間7~10日を守りましょう。
水稲種子は、10℃未満の低水温浸種で発芽速度が遅くなり、発芽率は低下します。特に、浸種後24時間の浸種水温(1日目の水温)が低いと、その後十分な水温を確保しても出芽揃いが悪くなるため(図2)、用水温が低い場合は、あらかじめ足し湯などにより15℃程度の水温を確保してから浸種を開始します。
また、外気温を遮断し昼夜の寒暖差を小さくするため、下記のような工夫を講じます。
・ 屋内で浸種を行う
・ 浸種水槽にコンパネや被覆資材を重ねて蓋をする
・ 催芽機の利用 等

(2)浸種日数が15日を越えると、出芽率が低下することがあります。
浸種期間は7~10日(積算温度100℃程度)を遵守します。



5 催 芽
(1) 催芽温度の厳守
細菌病類の発病を助長するので、30℃を厳守します。

(2) 催芽の確認
発芽の速度は種子予措、品種、休眠性の差で異なることから、所定時間になる前から芽切りの状態を確認します。⇒ 芽の伸ばしすぎは播種・出芽ムラの原因

(3) 病害対策
循環式ハト胸催芽器を用いる場合は、催芽器内に入れた桶内で催芽する(図3)等、種子のまわりの水を直接循環させないよう工夫します。
なお、桶内の水温は、催芽機の設定温度より1~2℃低くなるので、適宜調温してください。



6 播種~出芽
ア 苗質・育苗期間に応じた播種量設定とします。
稚苗(20~25日育苗):乾籾150~180g/箱
中苗(35~40日育苗):乾籾100~120g/箱
 培土の使用量は、床土2cm・覆土0.5cm程度です。
 出 芽
(ア) 出芽揃いをよくするため、加温出芽が基本です。
(イ) 細菌病対策のため、出芽温度は30℃を厳守します。
(ウ) 出芽長の目安は、稚苗1cm、中苗0.5cm程度です。

7 ハウス展開後の管理
(1)温度管理(慣行育苗・プール育苗共通)
ア 低温や荒天の日以外は、徐々に外気に慣らしていく管理とします(表1)。
 5℃以下の低温が予想される場合はハウスを閉め、必要に応じて保温・被覆します。
 晴天時は朝の気温上昇に注意し、早めにハウスの換気をおこないます。



(2)かん水(慣行育苗)
 かん水は基本的に朝1回(9時ごろまでに)、床土に水が十分に浸透するよう行います。夕方のかん水は、床土内の暖まった空気を冷やし、ムレ苗の発生原因となるので避けます。
イ 育苗の後半は、葉からの蒸散量が増えて乾きやすくなるので、かん水量を増やします。乾き過ぎなどにより夕方のかん水が必要となる場合は、しおれ防止程度にとどめます。

(3)追肥(慣行育苗・プール育苗共通)
 生育中に葉色がさめてきた場合や、病気で生育が衰えている場合は追肥が効果的です。
イ 時期は、稚苗で1.5~2葉期以降、中苗は2~2.5葉期以降とし、施用は箱あたり窒素成分1g(硫安であれば現物5g)を水1~1.5Lに溶かし、ジョウロ等で散布します。葉が乾いた状態で散布し、その後水を散布して葉の肥料分を洗い流します(葉焼け防止)。

(4)プール育苗の水管理
 1回目の水入れは、緑化終了から必ず2~3日以内に行います(細菌病対策)。このときの水深は、水没による生育不揃いを防止するため、苗箱の培土表面より下の位置とします(図5左)。
イ 2葉目が出始めたら培土表面が隠れる程度の水位を確保します(図5右)。
 水温が30℃を超えたら、新しい水と入れ替えて温度を下げます。
エ プールの落水は、田植えの2~3日前とし、極端に早い落水は避けます(しおれ対策)。



(5)育苗期病害の対策
 育苗期の細菌病類に関する注意報が発令されています。
育苗期間中の高温(特に催芽・出芽時30℃、緑化~硬化初期25℃を越える条件)や過湿条件は発生を助長するので、適正な温度・水管理に努めます。



👉 詳しくは・・・
   「岩手県病害虫防除所 令和2年度病害虫発生予察情報 注意報第1号」 
     いわてアグリベンチャーネット https://i-agri.net/Index/gate003

 適度なかん水(乾燥と過湿を繰り返さない)を行うとともに、低温が予想される場合は、ハウス内が5℃以下にならないよう、保温資材で温度確保に努める等の対策を徹底します。
 いもち病菌の感染を防ぐため、稲わら・籾殻は育苗施設付近に置かないよう注意します。



(6)農薬の安全使用
育苗ハウス内等で農薬を散布する場合、隣接する作物へ飛散しないよう注意します。
水稲育苗後に野菜などを栽培するハウスでは、土壌に薬剤が飛散すると後作物への農薬残留が懸念されます。無孔のビニールシートを敷いたり、ハウス内で箱施用剤等の使用は控える等対策を講じます。

圃場の準備


1 畦畔や農業用排水路等の点検・補修
幼穂形成期や減数分裂期など、イネが低温に弱い時期に、冷害対策として深水管理(15cm以上)ができるよう、あらかじめ畦畔をかさ上げしておきましょう。
また、畦畔や水尻からの漏水をふせぎ、湛水状態を保てる圃場をつくることは、深水管理や除草剤の効果を高め、農業用水の浪費防止にもなりますので、畦畔や水尻の補修も行いましょう。
農業用水・排水路等に修繕が必要となる箇所がないか、早いうちによく確認してください。
 
2 土づくり
(1)有機物の施用
有機物の施用は、土づくりに欠かせない技術です。
有機物の種類により、施用量が異なりますので、表2を参考に適正量を施用してください。



(2)深耕
・ 稲の生育・収量・品質を高めるためには、根の活力を高める土づくりが必要です。
・ 根の発達は、土壌の物理性と密接に関係しており、作土層が深く柔らかく、透水性が十分確保されていれば、根は下層まで深く分布し、養水分を生育後期まで豊富に吸収利用することができます。
・ 作土が浅いと肥効の持続が短くなるうえ、根張りも悪くなり根の機能が早く低下し、気象変動に対する抵抗力が弱くなるので、作土深は15cm程度を確保します。
・ なお、一気に深くすると、生産力 の低い下層土が混入するため、毎年徐々に深くするか、土づくり肥料・たい肥投入による地力増強、側条施肥なども検討します。


直播栽培技術(鉄コーティング種子による湛水表面播種栽培)


直播栽培は、育苗せず直接圃場に種子を播く栽培方法です。
春作業の省力化が図られるほか、移植栽培より生育ステージが遅くなるので、移植と組み合わせることで収穫時の作業分散が可能です。このため、稲作部門の規模拡大や高収益品目導入の手段として有効です。詳細については最寄りの普及センターまでお問い合わせください。

1 鉄コーティング種子の作製
(1)コーティング作業
種子は、12~15℃の水に4~5日間(積算40~60℃・日)浸種して吸水させます。

(2)造粒
・ 鉄粉に少量の焼石膏を加えて種子にコーティングし(種子コーティングマシンやコンクリートミキサー等を使用)、仕上げ用焼石膏もしくは専用シリカゲル資材で仕上げます。
・ 鉄粉のコーティング量は、乾籾の0.5倍重を基本とします。

(3)放熱
・ コーティング後にサビを発生させることで鉄皮膜が硬くなります。鉄の酸化反応(サビ)に伴い発熱するので、発芽率の低下を避けるために放熱します。
・ 市販されている鉄コーティング種子用酸化調製機を利用することで、短期間・省力的に処理することができます。
・ 従来の手作業で行う場合は、育苗箱にコーティング済み種子を1kg/箱以下(堆積厚8mm未満)に広げます。厚くなりすぎないように留意します。

(4)乾燥
・ 乾燥中に種子同士がくっついて塊になった場合は適宜ほぐします。専用シリカゲル資材で仕上げた場合は塊が生じにくくなります。
・ 乾燥程度は、外観の色具合に加えて、テスト籾摺りして確認してください。種子の表面(鉄皮膜)が赤褐色になり、玄米水分が13.0%以下になったら保存が可能です(表3)。



2 鉄コーティング湛水直播栽培の病害虫防除
鉄コーティング湛水直播栽培では、播種前の種子処理剤、播種時の土中処理剤の使用が、葉いもち・初期害虫の防除に有効です(表4、図8)。
使用時期・使用量は、最新の農薬登録に基づいて使用してください。


  • この資料に掲載の農薬は、令和2年3月16日現在の農薬登録情報に基づいています。

  • 農薬は使用前に必ずラベルを確認し、使用者が責任をもって使用してください。(資料作成年月日: 令和2年3月16日)




 

 

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