◆ 今年の栽培管理を振り返って、必要な技術対策を確実に実施できていたか、コスト面の無駄はなかったか等、来年に向けて分析や検討を行いましょう。

1 本年の生育経過と作柄
(1)育苗期
4月は低温寡照で経過し、無加温育苗などで出芽不揃いや生育遅れが散見されました。その後5月第1・第3半旬は気温が高く苗が伸びやすくなり、移植苗の充実度は平年並~やや下回りました。
(2)活着~分げつ期~幼穂形成期
・ 県内の移植盛期(50%)は5月17日、終期(90%)は同23日といずれも平年並でしたが、5月19日から22日は最高気温が平年に比べ3~10℃低く推移したため、活着の遅れがみられました。
・ 活着後は6月第4半旬まで好天が続いたため、6月下旬までの茎数は平年より多くなりましたが、その後は7月第4半旬まで長雨・日照不足となり、中干が十分行えないほ場も多くみられました。
・ また、幼穂形成期にかかる7月第3・第4半旬は日平均20℃以下の低温が連続したことから、一部品種では、出穂後に白ふ等の障害もみられました(図1)。
(3)出穂・登熟期
・ 県全体の出穂盛期は8月6日(平年差+1日)となり、北上川下流・東部地域で平年より1日遅く、その他の地域は平年並となりました。
・ その後、9月第2半旬まで高温多照で推移したことから、登熟は急速に進み、成熟期は県内平均で平年より3~6日程度早まりました。稲刈り盛期は、県全体で平年に比べ1日早くなりました。
・ 稈長は平年よりも長く、穂長は平年並、㎡穂数・総籾数はやや多くなっており、「ひとめぼれ」等の耐倒伏性が劣る品種や、中干不足のところを中心に、倒伏(図2)が多く見られました。
(4)本年の作柄、品質
・ 9月15日現在における岩手県の作柄概況(農林水産省東北農政局、令和2年9月30日公表)は、作況指数103、10a当たり予想収量は528kg(篩い目幅1.90mm)と見込まれています。
・ 外観品質は、白未熟粒は少ないものの、出穂の早い地域で胴割粒(図3)が散見され、また、斑点米カメムシの被害が例年より多くなっています(10/16現在 普及センター聞取り)。



2 来年の作付けに向けて
(1)育苗
大規模育苗では、浸種水温の制御や温度管理・かん水等をきめ細かに行うことが難しい場合があります。来年に向け、育苗設備や人員体制、作業スケジュールをチェックするとともに、基本に立ち返って必要な技術対策(浸種水槽の保温対策、プール育苗等の技術導入)を講じましょう。
→ 参考 農作物技術情報 第1号〔2020.3.19〕、同.号外 低温対策(水稲)〔2019.4.17〕
(2)本田管理
・ 本年は7月の低温寡照の影響による白ふ(図1)の発生、中干し不足による倒伏(図2)のほか、登熟初期の高温と刈遅れによる胴割粒(図3)も散見されました。また、病害虫についても、穂いもちの発生(図4)、割れ籾多発によるカメムシ被害(図5)なども問題となり、作柄成立に影響した要因が例年になく多岐にわたっています。
・ 生育期間全体を通じて、本年は気象変動が大きく、基本管理の徹底が難しい年でしたが、いま一度水管理の経過(中干し、低温時・高温時の水管理)、病害虫防除対策、刈取り時期などを振り返り、来年の栽培管理に活かしましょう。また、品種選択や作期を再考・必要に応じ見直しするとともに、複数品種の作付や苗質の変更、直播栽培などの作期分散技術も検討しましょう。
→ 参考 農作物技術情報 号外 水 稲(低温寡照対策)〔2020.7.22〕、同.第5号〔2020.7.30〕



3 稲作の低コスト栽培技術の導入に向けて
稲作のコストダウンのため、必要な資材までも安易に使用を控えると収量確保や良質米生産に悪影響を与えてしまいます。以下のような観点から総合的なコスト低減に努めましょう。
①作付面積の拡大(規模拡大)⇒ 10aあたり生産費の低減
②生産量の増加(収量増加) ⇒ 60kgあたり生産費、生産物10,000円あたり生産費の低減
③販売単価の向上(有利販売)⇒ 生産物10,000円あたり生産費の低減
生産コストの低減手法については「低コスト稲作栽培技術マニュアル(平成29年3月、岩手県)」が作成され、いわてアグリベンチャーネットに掲載されています。是非一度、お手持ちのパソコンやスマートフォンから確認してみましょう。(掲載アドレス https://i-agri.net/Index/gate007/001/7594
また各種のICT技術が農業分野に活用されてきており、県内でも導入に向けた取り組みが始まっています。県内外の先進事例などの動向に注目し、将来的な経営への活用などを今から考えてみましょう。

 

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