広大な牧野の中、親子でゆったり秋まで過ごします


こだわりの短角牛生産は新たなステージへ


短角牛のふるさと

平成18年に久慈市と合併した久慈市山形地域は、昔から短角牛の生産が盛んで、広大な自然に育まれた短角牛は、平成19年3月に旧村名を冠した「山形村短角牛」として商標登録されました。

現在、久慈市の短角牛飼養農家数は繁殖農家33戸、肥育農家13戸で、約300頭の繁殖雌牛と約500頭の肥育牛が飼育されています。

大地に育まれる短角牛

「山形村短角牛」は「南部牛」をルーツにもち、その飼養形態は、春から秋までは広い放牧地に親子で放牧され、冬は畜舎で過ごす「夏山冬里」方式が一般的です。繁殖は放牧地での「まき牛」による自然交配が中心で、2~3月に出産のピークを迎えます。生まれた子牛は夏の間に放牧地でのびのび育ち、毎年10月下旬に開催される市場に上場され、繁殖・肥育素牛として県内外に販売されます。

現在、久慈市山形町には総面積900haを超える7つの牧野が存在し、親子の牛が広大な自然の中で育てられています。

 闘牛としての地域貢献

「山形村短角牛」は、文化伝承の面でも地域振興に大きく貢献しており、地域おこしのイベントとして年4回、東北唯一の闘牛大会が開催されています。久慈市山形町の闘牛は、江戸時代に三陸沿岸で生産された塩を牛の背に乗せ、北上山地を越えて内陸の盛岡方面まで運ぶ際、先頭に立つ牛を決めるため、牛の突き合わせをしたのが起源とされています。大会開催時は県内外から多くの人が集まります。「山形村短角牛」の中でも、その素質を認められた雄子牛は「闘う牛」として育てられ、闘牛の盛んな地域へ渡り活躍しています。


雄の本能がぶつかりあう!横綱クラスの取り組みは、物凄い迫力!


 生産者と消費者との固い絆

近年、健康志向の高まりから、低脂肪で旨味の強い赤身肉として、メディアにも取り上げられることの多い「山形村短角牛」ですが、現在のような産地の確立には、首都圏の消費者団体「大地を守る会」(現「オイシックス・ラ・大地」)との長年にわたる取り引きや消費者交流等のつながりが大きく貢献しています。

取り引き開始当初から行われている交流会「べこツアー」は、令和元年で37年目を迎えました。首都圏の親子連れなど数十名が久慈市を訪れ、牧野で放牧されている牛に触れたり、農家に宿泊して牛舎でのエサやりを体験するなど、生産者と消費者の交流が毎年開催されています。


令和元年開牧時の「べこツアー」での1コマ



生産者の想いが詰まったパンフレットは消費者に大好評!


 ザッツ国産から新たな取り組みへ

国産飼料だけで飼育する「ザッツ国産」の取り組みを平成9年から開始し、平成23年の東日本大震災津波の際にもなんとか国産原料の配合飼料の入手を続け、現在に至るまでこの取り組みは継続されています。

一方で、平成27年には素牛価格が著しく高騰したことから、肥育コストの低減を目的に、非遺伝子組み換え原料であることにこだわりつつ、輸入原料を使った配合飼料への切り替えや、アルコール発酵飼料を組み合わせた飼料給与も行われてきました。

このアルコール発酵飼料は、醸造副産物をサイレージ化したもので、牛の健康維持にも良い効果があります。一般の肥育配合飼料と比べ安価で、混合する輸入穀類の割合も半分以下であることから、安全で健康的な美味しさにこだわりつつ、生産コストの低減につながっています。

さらに、平成28年には地域資源を有効活用する観点から、市内で生産された籾米サイレージ(以下、SGS)の給与試験を開始しました。牛の嗜好性は非常に良い一方で、当初は、保管中のSGSの変敗が問題となりましたが、生産者と関係機関が一体となった改善により、現在では品質の安定化が図られています。SGS給与試験では、増体・肉質について慣行のものと遜色がなく、今ではほとんどの肥育農家が利用しています。


籾米サイレージの嗜好性はバッチリ!



より評価が高い赤身肉を目指し、「食べ比べる会」で情報交換


これからの「山形村短角牛」

放牧や国産飼料等にこだわった飼育方法で生産された牛肉は、「山形村短角牛肥育部会」が主体となって定期的に「食べ比べる会」を開催して試食するなど、赤身肉の美味しさをより高める肥育方法について生産者相互で議論を重ねています。また、生産者自ら首都圏で開催されるフードイベントや、地域内外で行われる祭り等に出店し、「山形村短角牛」の生い立ちや飼養現場の状況など、生産者の熱い思いを直接消費者に伝えるPR活動を行っており、新たな取引先の開拓につながっています。

今後も、生産者と関係機関が一体となって、昔から守り続けてきた赤身肉の価値はもちろんのこと、その肉が作られるストーリーにも魅力があることを消費者に伝える活動を継続することで、「山形村短角牛」のファンの拡大と産地の一層の発展に取り組んでいきます。

久慈農業改良普及センター 高畑博志

※印刷はこちらから→こわだりの短角牛生産は新たなステージへ