1.発生状況
(1)令和元年8月中旬、陸前高田市の水田において、農業・食品産業技術総合研究機構東北農業研究センター(以下、東北農業研究センター)が行ったすくい取り調査でクモヘリカメムシの成虫が捕獲された。
(2)この連絡を受け、同年8月下旬、岩手県病害虫防除所が東北農業研究センターの協力のもと、同地域内8地点ですくい取り調査を行った結果、1地点において本種の幼虫を捕獲した。この地点は、山林に隣接した休耕田であり、ノビエ等のイネ科雑草が繁茂していた。
(3)本種の分布北限はこれまで宮城県南部とされており、令和元年度までの発生予察調査では本種の発生は確認されていなかった。

2.形態と生態
(1)形態的特徴
ア 成虫は体長15~17mm。体色は黄緑色を呈し、頭部および前胸背前縁部の両側に黒い縦帯がある(図1)。
イ 幼虫の体色は緑色で、成育するにつれて黄緑色になる(図2)。



(2)生態
ア 本県での発生生態は不明である。
イ 宮城県では、年2回発生し、2月上旬の最高気温が4.7℃を超える地域では成虫の越冬が可能であるとされている。
ウ 成虫はスギ・ヒノキの樹冠部や林床で越冬すると考えられており、越冬場所からイネ科植物(イヌビエ、メヒシバ、エノコログサなど)に飛来するとされている。

3.被害
(1)イネの出穂期になると、水田周辺にあるイネ科雑草やイタリアンライグラス等の牧草から、成虫が水田に侵入し、登熟初期から後期まで、成虫および幼虫がイネの穂を吸汁加害する。
(2)登熟初期に加害されると、しいなや屑米が多くなり、多発すると減収をもたらす。
(3)幼虫、成虫ともに、内・外穎の縫合部の内穎から斜めに口器を刺して吸汁する特異な加害を行う。そのため、被害部は子実粒の基部から先端のいずれの位置にも発現するが、中程より上部にやや多く発現する(図3)。



4.防除対策
本種を対象とした防除対策は未確立であるため、当面は本県の主要加害種であるアカスジカスミカメを対象とした防除を行うこと。

5.引用文献
(1)日本農業害虫大辞典(全国農村教育協会発行)
(2)大江高穂・高城拓未・鈴木秀人・横堀亜弥・加進丈二(2017)宮城県南部におけるクモヘリカメムシの発生消長.北日本病虫研報 68:242-246
(3)大江高穂・高城拓未・横堀亜弥・加進丈二(2017)宮城県におけるクモヘリカメムシのメッシュ農業気象データを用いた分布地域の推定.北日本病虫研報 68:247-252

 




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R1特殊報第2号(水稲クモヘリカメムシ)

 

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